Kyutech物性グループセミナー(アーカイブ)
第30回: 2017年3月13日(月) 14:40-16:10
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス・コラボ教育支援棟3階セミナー室
飯塚キャンパス飯塚AV講演室 (TV会議システムを使って中継を行います)
【タイトル】計算科学とインフォマティクス手法を用いた材料開発への期待
(Challenge to Material Development Using Computational Science and Informatics)
【講演者】常行真司氏 (東京大学大学院理学系研究科物理学専攻・教授, JSTさきがけ「理論・実験・計算科学とデータ科学が連携・融合した先進的マテリアルズインフォマティクスのための基盤技術の構築」研究総括)
【講演内容】
物質科学はいま情報科学と融合して新しい学術分野をつくりだそうとしています。これまで合成されていなかった新物質や新しい機能をもった材料を経験に頼らず,非経験的に予言する時代が来ています。このたび, この分野の世界的牽引者のひとりであられる東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授で現在JSTさきがけ研究総括を務めておられる常行真司先生をお招きして, この分野の前線の話題と今後の展望について講演して頂きます。
第29回: 2017年3月3日(金) 15:00-17:00
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス (飯塚)TV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【講演内容】
15:00-15:40
【タイトル】強相関効果による高温超伝導発現機構
【講演者】三澤貴宏 (東大物性研・主任研究員)
【概要】
近年の強相関電子系に対する数値計算手法の進展と, それを用いた強相関電子系における高温超伝導機構に対する我々の最近の研究結果について紹介する。特に, 銅酸化物高温超伝導体を記述する最も基本的な模型であるハバード模型および鉄系超伝導体に対する第一原理有効模型の解析を行ったところ, いずれの場合にも相分離領域近傍で増大する一様な電荷感受率の増大が高温超伝導発現と密接に関連していることを示した結果について発表する。さらに, この超伝導発現機構を反映して, 高温超伝導体の界面では積層方向の自由度を使うことで, 超伝導が自発的に最適される機構が存在することを明らかにした結果についても発表する [1]。この結果は, 最近の銅酸化物界面で実験的に
報告されている超伝導転移温度がドーピング濃度によらず固体の場合の最適値に保たれる振る舞いをよく説明するものとなっている。
[1] Takahiro Misawa et al., Sci. Adv. 2, e1600664 (2016).
http://advances.sciencemag.org/content/2/7/e1600664
15:40-16:20
【タイトル】YNi2B2Cにおける異方的超伝導ギャップの第一原理計算
【講演者】河村光晶 (東大物性研・研究員)
【概要】
YNi2B2C はフォノン媒介型超伝導体であるにもかかわらず異方的な超伝導ギャップを生じるという風変わりな特性を持つ. また, ホウ素原子の同位体効果が観測されていることから,軽元素由来のフォノンによって誘起される超伝導体としても興味深い。本研究では, 超伝導密度
汎関数理論に基づく第一原理計算を行い, この異方的超伝導の起源を調べた[1]。本研究でのFermi 面上のギャップ関数, および軌道成分の解析により, この物質の超伝導の異方性が主にNi3d 軌道混成の大幅な波数依存性に起因することが明らかにされた。
[1] M. Kawamura, R. Akashi, S. Tsuneyuki, PRB 95, 054506 (2017).
http://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevB.95.054506
16:20-17:00
【タイトル】YBa2Cu3O7-dナノコンポジット薄膜の界面構造と磁束ピンニング特性
【講演者】堀出朋哉 (物質工学研究系・助教)
【概要】
YBa2Cu3O7-d (YBCO) は臨界温度 (Tc) が高いだけでなく, 高温超伝導体の中でも臨界電流密度 (Jc) が高いため超伝導線材への応用が期待されている。2軸配向したバッファー層を有する金属テープ上にYBCO膜を成膜することにより粒界弱結合の影響を抑制し, 高いJc を有する被覆超伝導体(Coated Conductor) が作製されている。YBCO薄膜のJc をさらに向上させるためにピンニングセンターを導入する試みが行われてきた。非超伝導体であるBaZrO3, BaSnO3, BaHfO3, Ba2NbYO6, Y2O3 などをナノ介在物 (サイズ = 5-20 nm) として高密度 (間隔 = 50-10nm) に導入することにより、量子化磁束を強くピンニングすることができる。特にBaMO3 (M=Zr, Sn, Hf) を導入することにより作製されるナノロッドは高いピンニング特性を有している。ナノロッドによる磁束ピンニングにおいて, YBCOとBaMO3の界面, ナノロッドのサイズ, ナノロッドの間隔, ナノロッドの長さ等複数の構造パラメータがピンニング特性を支配している。今回は, 特に界面やひずみに着目し, ナノロッド界面の構造解析結果を示し, その磁束ピンニング特性への影響について議論する。
第28回: 2016年12月22日(木) 16:20-17:50
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
九州工業大学飯塚キャンパスTV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【講演者】小田勝 (基礎科学研究系・准教授)
【タイトル】半導体量子ドットの励起子光物性と応用への展開
(Understanding of exciton physics in the semiconductor quantum dots and the useful applications)
【概要】
寸法が数ナノメートル程度の半導体結晶である量子ドットは,その寸法・形状・構造の違いに応じて,バルク結晶とは大きく異なる電子物性を示す.本講演では,その中でも特に,新たな動作原理に基づく光電変換素子の開発に向け,その利用が期待されている,量子ドット系に特有に見られる電子・光物性現象を紹介し,その原理や課題を解説する。さらに,それらの現象の新規な利用法を探る,講演者による最近の取り組みを紹介する.
第27回: 2016年12月2日(金) 15:00-16:30
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス本部棟本部棟3F1会議室 &
九州工業大学飯塚キャンパス第2会議室 (TV会議システムを使って行います)
【講演者】古賀幹人 (静岡大学大学院教育学研究科学校教育研究専攻・教授)
【タイトル】ナノ近藤系におけるスピン電荷制御 (Spin and charge control for the nano Kondo system)
【概要】
量子ドットをはじめとする人工原子系を中心に, 最近の微細構造形成技術の進歩はめざましいものがあり, 近藤効果研究の新たな舞台となっている。本講演では, 三角形三重量子ドット系の近藤効果に起因する誘起電気分極とその外場による制御の可能性について,最近の理論的研究の一端を紹介する。
第26回: 2016年10月4日(火) 16:20-17:50
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 & 飯塚キャンパス研究管理棟2F TV会議室
(TV会議システムを使って行います)
【講演者】松平和之 (電気電子工学研究系・准教授)
【タイトル】強くスピン軌道相互作用した強相関5d電子系イリジウム酸化物の電子物性
【概要】
5d遷移金属酸化物はスピン軌道相互作用と電子相関効果の競合・協奏による多彩な電子物性が期待され,近年,活発な研究が展開されている。本セミナーでは,第21回(2016年)日本物理学会論文賞となった論文「Metal–Insulator Transitions in Pyrochlore Oxides Ln2Ir2O7」(J. Phys. Soc. Jpn. 80, 094701 (2011))を基にパイロクロア型Ir酸化物Ln2Ir2O7の金属絶縁体転移について紹介する。また最近研究を進めている幾何学的フラストレート系Ca5Ir3O12の研究の現状についても紹介する。
The 26th: Tuesday, October 4, 2016 from 16:20 to 17:50
【Place】Headquarters ridge 1F TV meeting room (Tobata) &Research management ridge 2F TV meeting room
【Speaker】Kazuyuki MATSUHIRA
【Title】Electronic properties of iridates with significant electron correlation and strong spin-orbit coupling
【Abstract】
Recently, 5d transition metal oxides have been actively investigated as an emergence of various electronic properties are expected by the competitive or concerted effect of electron correlation and spin-orbit interaction. In this seminar,
firstly, I will give an overview of metal insulator transition of pyrochlore iridates Ln2Ir2O7 on the basis of the paper "Metal–Insulator Transitions in Pyrochlore Oxides Ln2Ir2O7: J. Phys. Soc. Jpn. 80, 094701 (2011)" which is received 21st Outstanding Paper Award of the Physical Society of Japan. In addition, I will talk about recent result of geometrically frustrated iridate Ca5Ir3O12.
第25回: 2016年8月3日(水) 16:20-17:50
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 & 飯塚キャンパス研究管理棟2F TV会議室
(TV会議システムを使って行います)
【講演者】中村和磨 (基礎科学研究系・准教授)
【タイトル】超伝導転移温度の第一原理計算
【概要】
超伝導転移温度の第一原理計算手法と実証研究について報告する。近年は 200 Kオーダーのフォノン系超伝導体(高圧硫化水素化物)が発見され高温超伝導研究・新規物質探索に多くの関心が集まっている。超伝導転移温度の第一原理計算理論・バンドおよびフォノン分散曲線・電子格子相互作用および電子間相互作用の計算詳細・具体的物質への適用結果について報告する。
第24回: 2016年6月24日(金) 16:20-17:50
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】渡辺真仁 (基礎科学研究系・准教授)
【タイトル】準結晶Yb15Al34Au51の圧力に対してrobustな量子臨界現象
【概要】
物質に圧力や磁場をかけて磁気秩序などの秩序相への2次相転移の温度を絶対零度まで抑制した点を量子臨界点とよぶ。量子臨界点近傍では電気抵抗や比熱などの物理量が通常金属とは異なる振る舞いを示す量子臨界現象が現われることが知られている。量子臨界点近傍で増大する臨界ゆらぎは超伝導などの他の秩序相を誘起し得ることから,より高い超伝導転移温度の実現の可能性の観点からも注目を集めている。近年, Yb系金属化合物において, これまでよく理解されてきた磁気量子臨界現象に従わない, 非従来型の量子臨界現象が複数発見され,
強相関電子系の分野で大きな問題となっている。最近, Yb系準結晶Yb15Al34Au51が上記と共通の非従来型の量子臨界現象を発現することが
発見された。驚くべきことに, この物質は常圧・ゼロ磁場で量子臨界性を発現しており, さらに驚くべきことに, 圧力を1.5GPaかけても臨界性が保たれることが観測された。講演では, 量子臨界現象のこれまでの研究の発展を概観し, 非従来型の量子臨界現象を統一的に説明する機構として,Ybの臨界価数ゆらぎの理論を紹介し, 準結晶における圧力に対してrobustな臨界性の出現機構を議論する。
第23回 (特別セミナー): 2016年2月27日(土) 10:00-11:30
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス総合教育棟2階C-2F講義室
【講演者】大貫惇睦(琉球大学 理学部 客員教授)
【タイトル】Eu化合物の特異な電子状態と結晶反転対称性の破れた化合物のフェルミ面の性質
【概要】
現在(1)Eu化合物の特異な電子状態,(2)結晶反転対称性の破れた化合物のフェルミ面の性質, 及び(3)Co化合物の磁性とフェルミ面の性質について研究している。本講演では,(1)と(2)について講演する。(1)のEu化合物は, 大部分がEuは2価でGdと同じ磁性体であるが, 3価の化合物, EuPd3等も存在する。また, 近藤効果に基づく重い電子状態のEu化合物,EuNi2P2等 も存在する。これらの電子状態を概説する。次に(2)の結晶反転対称性の破れた結晶には, ラッシュバ型とカイラル構造が典型である。まず, ラッシュバ型のCeIrSi3の特異な超伝導について述べる。次に, カイラル構造のTaSi2, NbSi2, PdBiSeのフェルミ面の分裂について,特に, Biの相対論効果(スピン・軌道相互作用と質量補正)について議論する。私の大好きな純良単結晶育成の話をまじえながら, 議論したい。
第22回: 2016年2月1日(月) 16:20-17:50+α
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】石丸学 (物質工学研究系・教授)
【タイトル】電子線動径分布解析法による照射誘起化学的不規則性の解析
【概要】
アモルファス材料やナノ結晶材料の構造を解析する手法の1つとして、動径分布解析法がある。動径分布関数はX線や中性子線等の回折手法によって求めること が出来る。一方、電子回折法により動径分布解析を行っているグループは、世界的に見ても限定される。これは、電子と物質の強い相互作用による回折強度の定量性の劣化、電子顕微鏡に用いられている記録媒体の限界等に起因する。我々のグループでは先端的電子顕微鏡技術を用いてこれらの問題を克服し、様々なアモ ルファス・ナノ結晶材料の構造解析を行っている。本セミナーでは、照射環境下におけるSiCおよびGaNの構造変化を電子線動径分布解析法により調べた例 を報告する。
第21回: 2015年12月22日(火) 16:20-17:50+α
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】片宗優貴 (若手研究者フロンティア研究アカデミー,特任助教)
【タイトル】 ナノダイヤモンド膜の創製とその受光素子応用に向けた研究
【概要】
カーボン材料では炭素原子の持つ結合形態の多様性より,フラーレンやナノチューブのような,ナノカーボンに分類される多くの同素体が存在する.1990年代始めに発見された粒径10 nm以下のナノダイヤモンドは,超ナノ微結晶ダイヤモンド(UNCD)と称され,その物性は,結晶ダイヤモンドやアモルファスカーボン(a-C)とも異なり,微結晶を取り巻く粒界に大きく依存したものになる.UNCD膜では,膜中に無数に存在する微結晶により膜中での粒界が占める割合が大きく,それに起因した特異な光・電子物性が発現すると考えられている.中でも
光子エネルギー3-6 eVの光に対する10^5 /cmを超える大きな吸収係数に着目すると,光吸収により生成されるフォトキャリアの取り出しが可能になれば,薄膜の光電変換素子材料として期待できる.本セミナーでは,物理気相合成法によるUNCD膜の合成とその基礎的な物性評価,また受光素子応用に向けた半導体制御に関する研究の取り組みについて紹介する.